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コネタ そのいち


「納得いかないわ」
 そこには不機嫌な顔のキヌエが立っていた。
「どうしたんだい」
 手を止めて、ハヤトは彼女を見る。
 ハヤトには彼女を怒らせるような心当たりがなかった。少なくとも、ここ最近はそんな大物も拾ってきていないし、ムラサキがいきなり顔を出すようなこともない。
 だから彼女の怒りの根源がわからない。どうにかしてなだめすかすと、彼女はハヤトの胸倉をつかんだ。
「……だって、コメディだって言うのよ!? 私あんなに頑張っているのに! (自主規制)とか(自主規制)な思いもしてるというのによ!? どこがコメディよ!」
「それはしょうがないんじゃ」
「なーんーでーよー」
 彼は少なくとも楽しい日常を送っていればいいんじゃないかと考えていたが、彼女のほうはそうは思っていないようだった。
 だが、そんなところもキヌエらしさなんだろう。ハヤトは胸倉をつかまれたまま、彼女を抱きしめた。キヌエは不満げな顔を見せながらも、大人しく抱かれている。妙な構図だなあと思いながらも、それでもその手を離そうとしないキヌエがおかしかった。
(だからコメディだって言われるんだろうなあ)
 そんな思いは、決して口に出すことは出来ない。





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